退職してから、時間だけはたっぷりある。
そう思っていたのに、気づけばテレビとYouTubeを見て一日が終わっている。
そんなある日、YouTubeで大人の初心者がピアノを弾いている動画に目が止まった。
「へえ、大人になってからでも、こんなふうに弾けるようになるのか」
少し、心が動いた。
でも、ふと自分の手を見る。
節が太く、骨ばった、いかにも硬そうな手。
画面の中のピアニストの、細くしなやかな指とはまるで違う。
「この指じゃ、隣の鍵盤まで一緒に押してしまうんじゃないか」
「そもそも、こんな年齢と、こんな手で始めて、様になるんだろうか」
そう思うと、せっかく心が動いたのに、
「まあ、自分には向いてないか」
と、そっと蓋をしてしまう。
そんな経験はありませんか。
指が太いから弾けないのでは…という不安
もし本当に始めてみて、隣の鍵盤まで一緒に押してしまったら。
何度練習しても、この太い指のせいでうまくいかなかったら。
「その歳になって、ピアノなんて」
「不器用な手で、みっともないところを見せることになるんじゃないか」
そんな思いが、頭のどこかをよぎります。
若い頃なら、多少失敗しても「まあ、これから」で済んだかもしれません。
でも今は違います。
せっかく始めるなら、ちゃんと弾けるようになりたい。
恥をかきたくない。
そう思うからこそ、余計に一歩が重くなるのだと思います。
「まず始めてみればいい」と言われても、簡単には割り切れません。
だからこそ、
自分のこの手でも、本当に弾けるようになるのかを、始める前に知っておきたい。
そう思うのは、当たり前のことです。
指が太いとできない? → いいえ、できます
黒鍵と黒鍵の間は約 1.2cm。 数字だけ見ると狭く感じますが、世界のピアニストを見てみると、
- 手が大きい男性
- 指が太い人
- 骨太な体格の人
こうした人たちが普通に活躍しています。
特に海外の男性ピアニストは手が大きいですが、 「指が太いから弾けない」という話はほとんど聞きません。
私もNHKBSの「空港ピアノ」や「駅ピアノ」をよく観ますが、 指の太い男性が、気持ちよさそうに美しい演奏をしています。
つまり──
指の太さは“できない理由”にならない。
ということです。
■ むしろ太い指にはメリットがある
実際に鍵盤を押してみるとわかりますが、 ピアノの鍵盤はキーボードより重く、少し力が必要です。
その点、太い指は有利です。
太い指のメリット
- 和音が安定する
- 力強い音が出しやすい
- 指がブレにくい
- 鍵盤をしっかり押せる
細い指には細い指の悩みがあり、 太い指には太い指の強みがあります。
太い指は“不利”ではなく、あなたの個性です。
指の筋肉はどこにある?
「指って筋肉あるの?」と思うかもしれません。
指先を触ると骨と皮だけのように感じますが、 実は指先にはほとんど筋肉がありません。
筋肉は手のひら側に集中しています。

特に 虫様筋(ちゅうようきん) と呼ばれる筋肉が、 指の根元から手のひらにかけてあり、 これが指の動きを支えています。
ピアノを弾いているうちに自然と鍛えられるので、 特別なトレーニングは必要ありません。
慣れてくると、
指の力で弾く ↓ 肩の力を抜き、腕の重みで弾く
という “大人の弾き方” に変わっていきます。
私もピアノの先生に「肩の力を抜いて」と何度も言われました。
力を込めるのではなく、抜くことで音が変わる。長年、人の体を支える仕事の感覚が染みついていた身には、その発見が新鮮でした。
太い指でも弾きやすくなるコツ
指を立てすぎない
太い指の人が指を立てると、黒鍵の間に入りにくくなります。 少し寝かせ気味にすると安定します。
手首を柔らかく使う
手首が固いと指先に力が入りすぎます。 柔らかく保つことで、太い指でもスムーズに弾けます。
黒鍵は「奥」を押す
黒鍵は手前より奥の方が幅が広いので、太い指でも押しやすいです。
和音は体重を使う
指の力だけで押すのではなく、 体重を乗せると楽に弾けます。
まとめ:太い指は “不利” ではなく “強み”
退職してから何か始めたいと思っていたところに、YouTubeで見た大人のピアノ。
心が動いたのに、自分の太い指を見て、
「この年齢と、この手じゃ、さすがに無理だろう」
と、静かに諦めかけた。そんな人もいると思います。
でも、ここまで見てきた通り、指が太いことは、ピアノを諦める理由にはなりません。
むしろ、
- 和音が安定する
- 力強い音が出しやすい
- 鍵盤をしっかり押せる
という、太い指ならではの強みもあります。
長年、体を動かして生きてきた手だからこそ、出せる音もあるということです。
とはいえ、
「近所のピアノ教室に、この年齢から一人で通うのは、正直ちょっと気が引ける」
「かといって、YouTubeだけを見て、一人で続けられる自信もない」
そう感じている方も、少なくないはずです。
だとすれば、教室でもなく、完全な独学でもない、
「自宅で、自分のペースで、基礎からちゃんと教えてもらえる方法」
を知っておくことは、次の一歩を考えるうえで、きっと役に立つはずです。
まず「自分に合う方法」を知ってから選ぶ方が、最初の一歩を踏み出しやすくなります。
